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幽霊西へ行く(日语原文)-第3章

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 その大鴉の大群が、その朝は、林の側の砂丘《さきゆう》の上で、狂《くる》わしい乱舞《らんぶ》を続けていました。四十年、野沢町に住みなれた、老警官でさえ、まだ見たこともなかったほどの、無数の鴉の大群でした。
 しかもその一羽一羽は、口々に何か奇怪《きかい》な叫《さけ》びを続けていました。舞《ま》い上がり、舞い下がり、どんよりと灰色に曇《くも》った大空を蔽《おお》いつくし、大きな翼《つばさ》で虚空《こくう》を搏《う》って、しきりに天《あま》がけっているのでした。
 だがその動きを眺《なが》めていると、この大群の邉婴摔狻⒑韦欢à畏▌tのあることが分かって来ました。右に行く群れも、左に行く群れも、上の群れも、下の群れも、砂丘の上のある一点を中心として、幾《いく》つかの大きな渦《うず》を描《えが》いていました。そしてその中心の砂の上には、この大群の首領と見える、ことに大きな鴉《からす》が五、六羽、狂《くる》わしく鋭《するど》い鳴き声を立てながら、血走ったような真っ赤な眼で、砂の上を貪《むさぼ》るように見すえていました。鋭い嘴《くちばし》で、そこをしきりに掘《ほ》り返していました。舞い上がっては舞い下がって、砂を全身に浴びせかけんとするような、ふしぎな舞《まい》を舞っていました……
 人々の心には、何かギクリとこたえるものがあったのでしょう。その群れを蹴散《けち》らしながら歩みよると、そこだったのです。そこの砂だけ、最近|誰《だれ》かが掘り返したような、新しい色だったではありませんか。
 誰《だれ》一人、口をきこうとする者はありません。そのくせ、喉《のど》のすぐ奥《おく》まで、恐《おそ》ろしい言葉がこみ上げていたのですが……
 人々は黙々《もくもく》として、鍬《くわ》を振《ふ》るって、その場所を掘り返しにかかりました。一人として、この中から何が出て来るか、察していない者はなかったことでしょう。だが心の奥底のどこかでは、何とかして、万一にでも、その予想が外《はず》れてくれはしないかと……
 しかし、その恐《おそ》ろしい疑惑《ぎわく》はついに、現実の形となって現れました。
 鍬《くわ》の一振《ふ》り一振りごとに、男の手が、肩《かた》が、頭が、胴体《どうたい》が、次第に浮《う》かび上がって来ました。無惨《むざん》にも、頭と顔とを目茶目茶に叩《たた》きつぶされて、それは一見、誰のものとも識別できない死体でした。
 しかも着物は全部|剥《は》ぎ取られ、一糸もまとわぬ男の死体だったのです。
 この事件では、顔のない死体は、このようにして、発見されたのでした……
 男はポツリと言葉を切って、マッチで煙草《たばこ》に火をつけた。ポッと燃え上がる、かすかな赤い光の中で、その双眸《そうぼう》は、焔《ほのお》のように輝《かがや》いていた。
 ちょっと浅ぁⅳ坤肖椁筏ⅴ辚盲趣窑筏蓼盲咳菝病钉瑜Δ埭Α筏扦ⅳ搿¥长欷蓼且欢趣饣幛盲恳櫎à悉胜ぁ¥筏贰⒈恕钉臁筏趣瑜皮咳碎gを、私はいつかどこかで見たことがある。深く心の底に埋《う》もれて、どうしてもはっきりと、記憶《きおく》によみがえらせることはできないが、誰だったろう。誰だったのか……
 それにしても、彼の物語は、私を心から驚《おどろ》かせた。話術の巧《たく》みさも手伝《てつだ》っていたかも知れない。しかし、まるでその時、現場に居合わせたかのごとく、状景をこのように鮮《あざ》やかに、このように生々《なまなま》しく、私の眼前によみがえらせた力は決して唯者《ただもの》ではない。
 この男はいったい何者だろう。
 私の胸は、はげしい好奇心《こうきしん》に燃えていた。
「なるほど、面白いお話でした。それよりも、あなたの話術には驚《おどろ》きましたよ。失礼ですがおいくつですか」
「二十四になります」
「それから、これも妙《みよう》なお尋《たず》ねですが、いまのお話は、いくらかフィクション化してあるのでしょうね」
「先生はさっきご自分で、探偵《たんてい》小説はフィクションだ、といわれたばかりじゃありませんか」
 その青年は、笑いを喉《のど》の奥《おく》で噛《か》み潰《つぶ》すようにして答えた。
「それでその事件は、いったいどのように解決したのですか」
「まず死体が鑑定《かんてい》されました。その結果、顔面は誰《だれ》の死体か、分からないように粉砕《ふんさい》されてはいましたが、特長のある入歯や、指紋《しもん》や、足の裏の疵跡《きずあと》などから、医師松田順一の死体に疑いなしと断定されました。
 犯人は結局、哕炇治残稳饯涡仔小钉瑜Δ长Α筏趣いΔ长趣藳Q定されたのです。この男は、もともと、野沢町のある寺に棄《す》てられていた捨て児だったのです。それを先代の松田先生が、拾い上げて育て、自動車の哕炇证蚊庾础钉幛螭袱瑜Α筏蓼扦趣椁护郡韦扦埂V骷窑韦郡幛摔稀⒍髁xを命より大事に感じ、命令は善悪によらず実行するような、愚直《ぐちよく》な性格の男でしたが、復員以来、すべてにつけて、気が荒《あ》らくなっていた主人にたまりかね、飼《か》い犬《いぬ》が手を噛《か》むように、狂気《きようき》のあまり、今度の犯罪を行ったのだろうと推定されました」
「なるほど、面白い事件に摺钉沥筏い悉ⅳ辘蓼护螭ⅳ饯欷扦稀侯啢韦胜に捞濉护摔狻⒑韦我馕钉猡ⅳ辘蓼护螭汀>癞惓U撙胜椁小ⅳ嗓螭胜长趣扦猡浃辘亭蓼护螭琛!
「いや、先生、そんなに簡単にお考えにならないで下さい……この事件には、まだまだ奥《おく》深い裏の意味があるのですよ」
 私は思わず、ギクリとした。立ち上がろうとした私の腕《うで》をつかんだその男は、鉄のような力でふたたび私を坐《すわ》り直させた。
「先生、まあ落ちついてお聞きになって下さい。私は自分の智悾钉沥ā筏韦ⅳ椁笙蓼辘颏栅杲g《しぼ》って、この事件の恐《おそ》ろしい真相を推理したのです。これからそれを、詳《くわ》しくお話いたしましょう……」

    3

「私の考えでは、この死体の顔が粉砕《ふんさい》されていた、ということには、一つの恐ろしい犯人の意図がひそんでいるのです。
 先生、あなたのお考えのように、精神異常者の仕業《しわざ》だった、と当局も思いこんでしまったために、いくつもの大きな矛盾《むじゆん》が、そのまま見過ごされてしまったのでした。
 たとえばです。哕炇证k狂《はつきよう》して、主人を惨殺《ざんさつ》したのなら、その後で自動車を哕灓筏扑捞澶蜻び出すなどという真似《まね》が、いったいできることでしょうか……」
 たしかにそれは急所を鋭《するど》くえぐっていた。――それだ、と私も思わず叫《さけ》びたかったくらいに……
「それから、犯人はこの死体が発見されることを果たして、予想したかということなのです。何といっても、この半島は、日本中でも一番人口密度の稀薄《きはく》な土地、鉄道の駅と駅との間隔《かんかく》も、日本で一番長いというくらい……その上に、その間には、人家|一軒《けん》建っていません。この死体が発見されたのは、ほんの偶然《ぐうぜん》というほかはありませんね……
 それほど、発見される危険が少ないのなら、なぜわざわざ念を入れて、死体の顔を叩《たた》きつぶす必要があったのでしょう……」
 私は今まで、この事件を、狂人《きようじん》の犯行だとばかり思っていたのだった。そのため深くは考えようともしなかったのだが、その裏に、恐《おそ》ろしい犯人の奸智《かんち》がひそんでいるとなると……これはこの上もなく恐ろしい事件の一つだったではないか。
「それで、あなたはいったい、どういう風にこの真相を推理されたのですか」
 私は息せききってたずねた。
「私はまず、尾形三平が、ある瞬間《しゆんかん》までは決して発狂《はつきよう》していなかった、という考えを、根本の仮設として出発したのです。そして松田医院の人々を、めぐる人間関係を掘《ほ》り下げて行きました。
 第一に松田先生と澄江夫人の仲は、決して初めから円満にいってはいなかったということです。年は二十も摺钉沥筏い蓼埂SH子のようなひらきです。このような田舎《いなか》では、結婚《けつこん》に個人の意志などというものは認められていません。ことにまだ子供のような年ごろ
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