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幽霊西へ行く(日语原文)-第22章

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つい二、三日前、雑誌でその名前を眼《め》にしたばかりだった。
「はい、わかりました。すぐまいります」
 加瀬警部は電話機をおいて、
「横山君、酒はこの次にしてもらうよ」
「事件ですね?」
 横山部長は机の上のメモをのぞきこんで、
「縁起《えんぎ》の悪い番地ですね。シニンが二人頭をあわせてならんでいる」
 と眉《まゆ》をひそめた。

    2

 松尾|恒弘《つねひろ》の邸宅《ていたく》は、戦争前の建築らしい。いかにも古風で堂々とした洋館だが、気のせいか、警部は中に一歩ふみこんだとたんに、胸をしめつけられるような息苦しさを感じた。
 現場は奥《おく》の洋間だった。十六|畳《じよう》ぐらいの大きさで、壁《かべ》は大半が書棚《しよだな》になっており、一隅《いちぐう》にはデスク、その反対側の隅《すみ》には、応接用のセットがおいてある。
 松尾恒弘は、和服のまま、回転|椅子《いす》にすわり、デスクにうつぶせになって死んでいた。警部がちょっと横顔をのぞきこんだ感じでは五十五、六と思われた。
「妙《みよう》だな」
 部屋《へや》を見まわして警部はつぶやいた。回転椅子や、その下の絨毯《じゆうたん》がべっとり血にそまっているのは当然として、その血の糸は、ずっと応接セットのほうまで続いている。
「やられたのはむこうですね。犯人は被害者《ひがいしや》とすわって話をしている間に、突然|凶器《きようき》で先生を刺《さ》し、死んだと思って逃《に》げ出したのですね。しかし、先生は完全に死んではいなかった。最後の死力をふりしぼって、ここまではって来ると、なんとか体を椅子までひきずりあげ、ここへすわって息をひきとったのですね」
 横山部長は、警部の心中を見すかしたようにいった。
「うむ、鋭《するど》い短刀かペンナイフのようなもので、心臓近くを一突《ひとつ》きにやられたのだな」
「凶器《きようき》はまだ発見されませんが、犯人はこれを楯《たて》のようにして、自分の体に返り血のつくのをさけようとしたと思われます」
 床《ゆか》の上におちていたクッションを指さして目白署の刑事《けいじ》がいった。傷口は左乳の近く、そこを前からやられている。たしかに、常習犯でもないかぎり、これだけの傷をおわせたなら、相手は即死《そくし》したと思うだろう。
「なるほど、それで問睿稀ⅳ胜急缓φ摺钉窑い筏洹筏⑺懒Δ颏膜筏啤ⅳ长长蓼扦悉盲评搐郡趣いΔ长趣坤
 警部はいま一度、死体を見つめた。顔の下にはメモ用紙らしい紙片がのぞいている。その上には「二」という字が一字書きのこされ、その末端《まつたん》で右手の万年筆がとまっていた。
「妙《みよう》だ……」
「何がです?」
 横山部長も今度は警部の真意を読みとれなかったらしい。首をかしげてたずねた。
「なぜ、先生がいまわのきわに、この万年筆を使ったかということだよ。わざわざこれを選んでキャップをぬいたらしいが」
 たしかに、死体の左手は、金色のキャップを握《にぎ》りしめている。それなのに、デスクの上のペン皿《ざら》には、鉛筆《えんぴつ》もあれば、すぐ書けるようになっている万年筆も二、三本のっているのだ。
「そういえばたしかに妙《みよう》ですね。握っているのはたしかにプラチナ?オネスト六〇――机の上のはパ‘にシェファ衰猊螗芝楗螭扦工俊ˉ雪‘カ悉工皶堡胩鍎荬摔胜盲皮い毪韦恕ⅳ胜脊b品を、わざわざキャップをぬいてつかったんでしょう」
「わからんな。これはたしかに、インキ壜《つぼ》がいらないというキャッチフレ氦菈婴瓿訾筏皮い胪蚰旯Pのはずだが、そういう性能はともかくとして、死ぬことを覚悟《かくご》した人間が、最後にこの一本にこだわったということには、何かの意味がありそうだね……」

    3

 鑑識《かんしき》の眨伽Kわると、加瀬警部は机の上のペン皿を克明《こくめい》に眨伽埔姢郡⒁苫蟆钉铯筏仙瞍蓼胍环饯坤盲俊6兢违雪‘カ摔稀ⅳ沥悚螭惹啶瘸啶违ぅ螗い盲绚い巳毪盲皮い搿%伐Д榨々‘もモンブランもその通り、鉛筆もちゃんと削《けず》ってあって、ちょっとした書き物には何の不自由もなかったはず――松尾恒弘が最期の瞬間《しゆんかん》に、この特定の万年筆に執念《しゆうねん》を燃やした理由はどうしてもわからなかったのである。警部はいちおう、この疑問をタナあげにして、次の段階の眨伽艘皮盲俊
 学者の家庭というものは、その妻がよほどしっかりしていないかぎり、どうしても非人間的に冷たくなって来るものだが、この家も例外ではなかったらしい。
 まず、恒弘の妻の牧子は、後妻で三十二|歳《さい》の女ざかり、見るからに虚栄心《きよえいしん》の強そうな、どこか険《けん》のある美人だが、聞きこみによると、大学教授夫人という見栄にかられて結婚《けつこん》したものの、性格的にしっくりしないところがあるのか、夫の学問を理解しようとつとめるどころではなく、家族の生活に無干渉《むかんしよう》な夫の性格をいいことに、ひたすら家を明けて撸Г託iいているらしい。
 恒弘と牧子の間には子供がなく、先妻の残した子供に、省一郎、慶二郎、節子の三人がいるが、省一郎はアメリカ文学研究のために現在ハ些‘ド大学に留学中だというのだから、この事件とは全然無関係と見るほかはない。
 次男の慶二郎は、一家の中ではたしかに不肖《ふしよう》の息子《むすこ》らしい。父や秀才の兄に対しては、たえず劣等感《れつとうかん》を抱《いだ》いていたらしいが、大学の入学試験に何度も失敗をかさねたのがきっかけで、すっかりぐれてしまい、家をとび出してしまったというのだ。二年前、家出の当時には、自殺でもしたのではないかとあわてて、家でも捜索願《そうさくねが》いを出したらしいが、三か月後にはひょっこり帰って来た。しかし、その間、どこで何をしていたかということについては、口をつぐんで語らなかったというのである。今では、この家の近くにアパ趣蚪瑜辘谱·螭扦い毪⒑韦颏筏皮い毪悉铯椁胜ぁ<窑丐瑜辘膜韦稀⒔黏颏护婴辘死搐霑rだけ、しかもそのたびに、
「金をくれないなら、親父《おやじ》に恥《はじ》をかかせてやる。大学教授の息子が、強盗《ごうとう》をやったら、新聞は大喜びで書きたてるだろうよ」
 などと、牧子をおどしつけていたらしい。
 子供たちの中で、家に残っているのは、二十一になる娘《むすめ》の節子だけだが、この娘はほかの人間にはあたりがいいのに、継母《ままはは》とはぜんぜんそりがあわないらしい。合性が悪いどころか、犬猿《けんえん》の仲らしく、近所の商店の御用聞《ごようき》きも、この二人が口をきいているところは見たことがないといっているくらいだった。
 そのほかに、この家には、牧子の甥《おい》で、千代田大学文学部の学生、宇野秀行という青年がいる。これがまた、厄介《やつかい》千万な道楽息子で、勉強もそっちのけに撸Г婴蓼铯辍ⅳ长吻挨卧囼Yではカンニングをやって見つかり、無期停学の処分をくった上に、恒弘からは家を出るようにいい渡《わた》されているのを、なかなかいい下宿が見つからないからという口実で、ずるずるいすわっているらしい。
 伯父貴《おじき》がついているから、かるい処分で済むだろう――とたかをくくっていたのに、こんなことになったものだから、自分の悪いことはタナにあげて、恒弘を大いに恨《うら》んでいるらしい。
 ほかに女中が一人いるが、彼女は郷里に不幸があって帰っている。この殺人には明らかに無関係なのだ。
 これだけの予備知識を頭に入れて、警部はさらに細かな取り眨伽巳毪盲俊

    4

 松尾恒弘の死亡推定時刻は、午後八時前後と見られたが、この前後の各人の所在を聞いて警部はおどろいた。この時刻には、家人は誰《だれ》も家にはいなかったのだ。
 牧子は午後からデパ趣驓iき、それからロ丧伐绌‘の映画を見て、九時ごろ帰宅し、夫の死体を発見して、あわてて一一〇番へ急報したというのである。ただ、八時前後のその動静を証明してくれる者はだれもなく、家に帰って来た姿を目撃《もくげき》した者もいないのだ。
 節子はその晩、友人の家へ行っていた。しかし、そこを出たのは七時半ごろで、それから一時間ぐらいは有楽町《ゆうらくちよう》のフ丧互螗咯‘を散歩し、九時ちょっとすぎ、ちょうどパトロ毳‘がかけつけて来た直後に帰って来たというのである。
「こんなことになると思ったら、出かけませんでしたのに……お父さんは、今夜は一人きりのほうがいい、仕事に気が散らないからとおっしゃったものですから……わたくしの気のせいかも知れませんけれど、だれか秘密にお客でも訪《たず》ねて来るので、わたくしがじゃまになるような感じでしたわ」
 眼《め》を真っ
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